耳の変形

⑨ 耳の変形

耳の先天異常について

主にお母さんのおなかの中で赤ちゃんの耳が作られる時期に、何らかの理由で耳の形がうまくできなかった場合に起こります。
「埋没耳」「折れ耳」「立ち耳」「スタール耳」「小耳症」「副耳」「耳瘻孔」など種類は様々です。変形の種類や程度によっては、生後早期に治療が開始できれば手術ではなく矯正器具をつけて治すことも可能です。
当科では変形の種類とお子さんの成長に応じ、適切な診断・治療を提供しています。

種類

  • 埋没耳

    耳の上1/3程度が皮膚の下に埋まってしまう変形です。耳の筋肉の異常や軟骨の異常などが原因として考えられています。
    眼鏡やマスクがかけられなくなるなど、機能的にも支障をきたします。
    生後すぐから半年頃までは、耳の軟骨が柔らかく、装具により矯正治療を行うことが可能です。装具による治療が困難な患者さんには手術治療を行います。

  • 折れ耳・絞扼耳

    耳の上の部分が前方に垂れ下がっている変形です。一般に耳の大きさは正常なものを折れ耳、耳の長さが短いものを絞扼耳と呼びます。
    矯正治療で改善が得られることもありますが、困難な場合には軟骨移植などを利用した矯正手術を行います。

  • 立ち耳

    軟骨の弯曲が不十分であったり、耳の軟骨が大きすぎたりするために頭に対する耳の角度が急になる変形です。
    側頭部-耳介の角度が30°以上となる場合診断されます。手術で軟骨の切除や形成を行うことで治療することが多いです。

  • スタール耳

    通常2又に分かれている対耳輪が3又に分かれていることで、耳がとがったような変形となります。
    矯正治療が困難な場合、手術で余分な軟骨(第3脚)を切除するなどして変形を改善させることが可能です。

  • 小耳症

    耳の先天異常の中で変形が強いもので、耳の形が一部もしくはすべて欠けてしまっているものです。多くの場合外耳道が閉じているために難聴(伝音性難聴)を伴います。他、顔面神経や下あごの形成異常を伴うことがあります。
    患者さん本人の胸の肋軟骨を使って耳の形を作る手術を行います。通常体の成長を待った後、8~10歳以降に実施します。手術は2回に分けて実施します。初回は肋軟骨で作成した耳型(フレームワーク)を耳を作りたい部分の皮膚の下に埋め込み、2回目の手術で作成した耳を持ち上げます。

  • 副耳

    耳の前方などにいぼのような突起物ができる異常です。出生1000人に対して15人程度で、比較的よく見られる異常です。頬や首にできることもあります。
    内部に軟骨を含まず、茎が細いものに関しては糸でしばって10日~2週間程度で自然に脱落させる処置を行います。その他のものについては1歳前後以降に手術治療を行います。

  • 耳瘻孔

    耳やその周囲に生まれつき穴ができている異常です。耳の前に穴があり、外耳道へ向かって1~2cmほどの管のようになっている場合が多いですが、発生場所や管の長さ、深さは様々です。
    無症状であることが多いですが、押すと白い粥状のものが出てきたり、化膿して腫れや痛みを伴ったりすることがあります。
    手術は管(瘻孔)の完全摘出を行います。化膿している場合は一度切開などの処置を行い、炎症が落ち着いた後に手術治療を行います。

治療

  • 装具などによる矯正治療

    埋没耳や折れ耳などの耳介変形が対象です。
    熱可塑樹脂やワイヤーを用いた装具や、市販の矯正器具(イヤークリップ)等を使用して治療を行います。
    生後すぐから1歳未満、特に生後6か月までのお子さんが適応となります。装具の装着方法、管理について指導を行い、定期的な外来通院にて治療の効果を判断します。

  • 手術治療

    副耳や耳瘻孔の方、耳介変形については装具による治療が困難な方や、成長してから治療を希望した方などが適応となります。
    副耳や耳瘻孔については1歳前後以降、埋没耳や折れ耳などの変形については耳の発達を考慮して3歳以降、通常5、6歳頃に治療を行います。変形の程度によりますが、小児患者さんの手術治療については全身麻酔が必要となることが多いです。治療の詳しい内容については一度外来を受診いただきご相談ください。

ページトップへ戻る