⑤ 眼瞼の異常
(眼瞼下垂、逆さまつげ)
眼瞼下垂症とは
まぶたは上眼瞼挙筋やミュラー筋と呼ばれる筋肉が、瞼板と呼ばれるまぶたの芯となる構造を引っ張り上げることで開きます。
眼瞼下垂症は様々な原因により、この構造が破綻し、上まぶたが十分に上がらなくなる状態のことです。
・症状
程度は軽度~重度まで様々で、重度の場合は目を上手く開けられず、ものが見えづらくなることがあります。
また、前頭筋というおでこの筋肉で目を開けようとするため、おでこにしわが出来るようになり、眉毛の位置が高くなります。頭痛、肩こりの原因になることもあります。
・原因
- 先天性眼瞼下垂
生まれつきまぶたをあげる筋肉や神経の機能が弱い方がいます。
- 後天性眼瞼下垂
多くの場合、加齢やコンタクトレンズの使用により腱膜がたるみ、筋肉の力が瞼板に効果的に伝わらず、まぶたが上がりにくくなってしまいます(加齢性、腱膜性下垂)。また、重症筋無力症などの疾患の症状として現れる場合もあります。
・検査
- 眼瞼挙筋機能検査
おでこの筋肉の影響のない状態で、目で下を向いた時と上を向いた時の瞼の動きを確認します。正常だと概ね15mm前後とされています。
- MRD:Margin Reflex Distance
黒目の中心と上まぶたの縁との距離を測ります。正常だと概ね3.5~5.5mmとされています。
・治療
- 余剰皮膚切除術
余剰(弛緩)して垂れさがった上眼瞼皮膚を切除する方法です。上眼瞼皮膚を切除する場合と、眉毛の下で皮膚を切除する場合があります。立った、あるいは座った状態で余っている皮膚を取り除く量を決めて切除します。同じ部位の眼輪筋も切除することがあります。その後は細い糸できれいに縫合閉鎖します。まつげを押し下げる余った皮膚がなくなるので目を開くのが楽になります。
- 挙筋前転術
腱膜を瞼板に縫い付ける手術です。上まぶたの皮膚を切開し、たるんだ腱膜や筋肉を前方に引っ張り、糸で瞼板に縫い付けます。この手術により腱膜のたるみが改善し、上眼瞼挙筋肉の力がしっかりと瞼板に伝わり、十分にまぶたが開くようになります。
- 前頭筋吊り上げ術
上眼瞼挙筋の機能低下が強く、挙筋前転術では改善できない重度の眼瞼下垂症に対して主に行われます。太ももの筋膜や糸などを用いて瞼板とおでこの筋肉を繋ぎ合わせる手術です。これにより、おでこの筋肉を利用した眉毛を上げる動作で、まぶたを開くことができるようになります。
睫毛内反症(逆さまつげ)、眼瞼内反症とは
まぶた自体は正常で、まつげだけが内側を向いて生えてしまう状態を睫毛内反症といいます。まぶたの皮膚が多かったり、下眼瞼牽引筋腱膜(下まぶたをひっぱる筋肉)が緩かったりするために、まぶたそのものが内側へ向いてしまう状態を眼瞼内反症といいます。
・症状
軽度であれば無症状の場合もありますが、まつげが眼球を刺激することにより目がゴロゴロするような異物感が出現し目の充血、流涙が起きることもあります。また、眼の表面の角膜を傷がつく角膜潰瘍という状態になることもあります。
・原因
睫毛内反症は先天性のことが多く、成長とともに改善する場合があります。眼瞼内反は加齢によるものが多く、手術加療が必要となります。
・検査
ピンチテスト(加齢性の場合)
下眼瞼をつまんで手前に引っ張り、眼球との距離を測ります。正常では5mm程度とされています。
・治療
- 埋没法
軽度の場合には下眼瞼に糸をかけてまつげを外反させます。傷が小さいですが、再発も多いです。
- 切開法
まぶたを切開し、外反させるように瞼板や下眼瞼牽引筋腱膜に縫合します。Hots法、Jones法等、症例にあった術式を選択します。
- その他
まつげの毛根を電気分解する方法、冷凍凝固する方法、まつげの根本の皮膚、粘膜を含めて切除する方法等が行われることがあります。
その他の眼瞼疾患に関して
眼瞼外反症、外傷、腫瘍、先天性疾患等、様々な疾患を取り扱っております。
※当院での手術について
当院では日帰り手術または、1~2泊の入院での手術を行っています。
※術後
数日間ははれやむくみがおこるため、下を向くことや、激しい運動はさけて下さい。抜糸は必要な場合は5~7日後に行います。最終的な仕上がりは数か月後となる場合があります。
※危険性・合併症に関して
・腫脹、浮腫み(むくみ)
まぶたは非常に腫れやむくみが出やすい部位です。
・出血・血腫
術後に出血が起こることがあります。多くは一時的なものですが、稀に止血や血腫除去などの追加処置が必要になる場合があります。
・兎眼・角膜障害
目が完全に閉じなくなり、薄目が開く状態です。その場合は角膜が乾くのを防ぐために、眼軟膏を使用します。
・再発の可能性
再発とは、同じ症状が発生することです。術後良好な結果であっても、数年で再発することがあります。
・まぶたの開きの左右差、まぶたの形の変化
手術中に十分確認を行いますが、それでも術後にまぶたの開きに左右が出ることがあります。まぶたの形が変わる、二重になることで顔の印象が変わることがあります。
・その他
上記以外についても手術説明の際にご説明いたします。