手外科

⑩ 手外科(手の痛み、しびれ、変形、外傷)

形成外科では、日本手外科学会専門医1名を含む学会員数名が常勤医として診療にあたっています。整形外科の上肢班やリハビリテーション部とも連携して治療を行っています。
上肢、特に手に関係する患者さんの様々な悩みについて、一緒に解決法を探っていきます。腕や手の外傷(骨折、切断、腱断裂、やけどなど)も積極的に受け入れており、年間100件以上の急患に対応しています。

このような症状があれば、受診してください!

  • 手の動きが悪い、力が入らない
  • 手がしびれる、痛い
  • 手が変形してきた
  • 腕や手にしこりがある
  • 手に生まれつきの異常がある(指が多い、指がくっついている、指が太い、など)
  • 腕や手を怪我した
  • 過去の怪我や手術などによる後遺症に悩んでいる

ばね指(狭窄性腱鞘炎)

何が原因?

手のひらの腱鞘炎が原因となることが多いです。

どんな症状?

腱の動きが邪魔されて、指を曲げ伸ばしした時に引っ掛かりを感じます(弾発現象)。指の根元を押されると、痛みを感じることがあります。

治療は?

局所安静や夜間装具でよくなることがあります。ステロイドの注射も効果がありますが、何回も続けることはできません。保存療法でよくならないときは、手術で原因となっている腱鞘を切開します。通常は局所麻酔、日帰りで手術を行います。

ド・ケルバン病(ケルバン腱鞘炎)

ばね指に似た病態が、手首(親指の付け根あたり)に起こります。痛みが主症状です。親指を中に入れた握りこぶしを小指側に傾けると、痛みが増強します(アイヒホッフ試験陽性)。

手根管症候群

何が原因?

手首にある靭帯に、正中神経という太い神経が圧迫されて起こることが多いです。妊娠中・閉経後の女性や、糖尿病の方、透析中の方に多く見られます。

どんな症状?

親指、人差し指、中指にしびれや感覚低下が起こります。母指球の筋肉が萎縮して、親指がうまく動かせなくなることがあります。

治療は?

手術が最も確実な治療法です。原因となっている靭帯を切開して、圧迫されている神経を助けます。通常は局所麻酔、日帰りで手術します。

肘部管症候群

何が原因?

肘周辺の靭帯や筋肉などに尺骨神経という太い神経が圧迫されて起こります。過去の骨折などによる肘関節の変形が原因となることもあります。

どんな症状?

薬指、小指にしびれや感覚低下が起こります。指の細かい動きが難しくなり、進行すると鉤爪変形という特徴的な指の変形が見られます。

治療は?

手術が最も確実な治療法です。原因となっている部分の神経圧迫を解除します。骨や関節の変形がある場合は、そちらについても手術する場合があります。通常は入院して手術します。

デュピュイトラン拘縮

何が原因?

原因は不明ですが、手掌腱膜という手のひらの皮下にある組織が分厚くなり、縮こまって起こります。

どんな症状?

主に中指、薬指、小指が曲がったまま、伸びなくなってきます。指を曲げる機能は悪化しません。症状は徐々に進行します。

治療は?

初期には保存療法も選択されますが、生活に支障が出るほど指が曲がった状態には手術が効果的です。異常な腱膜を切開したり、切除したりして指が伸ばせるようにします。

母指CM関節症

何が原因?

親指の付け根にある関節の靭帯が痛んでいるため、関節を支えきれなくなって軟骨の摩耗や脱臼などの変形を生じます。過去の怪我が原因となることもありますが、自然に発症することも多いです。

どんな症状?

変形した関節に痛みを生じて、物をつかんだり、つまんだりすることが難しくなります。進行すると親指自体が変形してくることもあります。

治療は?

サポーターなどで関節を固定すると症状が緩和されることがあります。保存療法で良くならない場合や、つかむ能力・つまむ能力を改善させたい場合は手術を行います。関節を固定する術式、腱を移植して靭帯を作り直す術式などがあり、患者さんのニーズや病期の進行度などによって使い分けます。

多指症、合指症

何が原因?

多くの人とは異なる形で生まれてくることを医学的には先天異常といいます。手の先天異常の一部には遺伝子異常も見つかっていますが、多指症や合指症のお子さんのほとんどは、遺伝とは無関係と考えられています。

どんな症状?

指の数が5本より多いと多指症と呼ばれ、隣の指同士がくっついていると合指症と呼ばれます。両者は同時に起こることもあります。手以外の先天異常を合併することもあります。多指症は親指に、合指症は中指と薬指の間に生じることが多いです。

治療は?

1歳前後で手術します。術後もお子さんの成長に伴って、手術した指に問題が生じないか定期的に確認します。主治医とは長いお付き合いになります。

軟部腫瘍、骨軟骨腫瘍

手のしこりはほとんどが良性ですが、良性であっても放っておくと変形や骨折の原因となることがあります。痛みなど症状が無くても、一度は診察を受けてください。

指切断

何が原因?

工場や建設現場での労災、オートバイ整備中の事故など、重量物や機械による受傷が多いです。

治療は?

切断の状態によっては、手術による再接着が可能です。顕微鏡を使って指の血管を縫うことで、指先に再び血が通うようになります。この場合、術後は 2週間程度の入院安静が必要です。
先端に近い部分での切断や、早期復帰を希望される患者さんなど、再接着術があまり必要とされない場合は、断端形成(指先を丸めて縫い閉じる)や保存療法(軟膏や創傷被覆材で皮膚が再生するのを待つ)を選択します。 特に親指は機能上重要な指なので、もし再接着がうまくいかなかった場合は次の手段を考慮します。足の指の一部を移植して親指を作り直す手術(母指再建術)や、人差し指を移動して親指として作り変える手術(母指化手術)が一般的です。

腱断裂

何が原因?

刃物などで直接切って受傷することもありますし、骨折やリウマチなどに合併して切れることもあります。手首の骨折(橈骨遠位端骨折)では、少し遅れて親指の先端の関節(IP関節)を伸ばす腱(長母指伸筋腱)が切れることがあります。またこの骨折をプレート固定で治療したとき、指を曲げる腱(長母指屈筋腱や深指屈筋腱)が切れることがあります。

どんな症状?

手のひら側の腱が切れると、自力で指を曲げられなくなります、手の甲側の腱が切れると、自力で指を伸ばせなくなります。

治療は?

手術で切れた腱を縫います。腱の切れ方によっては元通りに縫うのが難しい場合もあります。そのときは、別の腱を移動させて使ったり(腱移行術)、移植して橋渡ししたり(腱移植術)します。術後はリハビリで少しずつ指を動かせるようにします。かなり綿密なリハビリ計画が必要です。

骨折・脱臼

転んで手をついたり、突き指をしたりしたあと、なかなか腫れや痛みが引かない場合は骨折しているかもしれません。放っておくと骨がくっつかなくなり(偽関節)、痛みや変形が恒常化する場合がありますので、早めに受診してください。
交通事故や落下事故などの激しい外傷では、骨折した骨が露出してしまう状態がありえます(開放骨折)。この場合は緊急手術が必要です。形成外科は拡大視下で血管や神経を縫う技術(マイクロサージャリー)に長けており、骨を覆うための筋肉や血管を移植する手術も頻繁に行っています。

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