瘢痕

④ 瘢痕
(傷あとのひきつれ、ケロイド)

体の表面にできた傷は、通常であれば数週間程で治癒し「傷あと(瘢痕)」となり、その後、数ヶ月かけて炎症による赤みや盛り上がりが落ち着き、数年かけて目立たなくなっていきます。
しかし、傷あと部分に張力や炎症が持続してしまう等の理由で、「ひきつれ」や「ケロイド」として傷あとが目立ってしまうことがあります。

傷あとのケアについて

傷が傷あとに変化したら、早期からケアをすることで、より目立たない傷あとを目指すことができ、ひきつれやケロイドを予防できる可能性があります。
傷あとのケアには、張力や紫外線、摩擦の予防が必須であり、「テーピング」を行うことが一般的です。
ある程度紫外線遮蔽効果のある肌に優しいテープを、下図のように傷あとに対して垂直に、傷あとを少し寄せるようなイメージで貼ります。(黒い点線部:傷あと 赤矢印:寄せる方向)

テーピングは、傷あとの状態にもよりますが、概ね3ヶ月を目安に続けることが多いです。
テープかぶれを起こした場合は、一旦お休みし、かぶれが落ち着いたら再開します。
テープは、院内の売店やドラッグストア等でお求めいただけます。

ひきつれについて

傷あとの炎症がなかなか引かず、傷あとが赤く盛り上がり続け、痛みやかゆみを伴うことがあり、これを肥厚性瘢痕といいます。
深い傷や張力のかかる関節部にできた傷は、肥厚性瘢痕となることがあります。
例えば胸やお腹の手術の傷あと、肘や膝の怪我の傷あとなどに見られ、「ひきつれ(瘢痕拘縮)」を生じて、関節が伸びない等、日常生活に支障をきたすこともあります。
また、熱傷でできた肥厚性瘢痕では、数十年経つと皮膚癌が発生することもあるため、注意が必要です。

ケロイドについて

もともとの傷あとの範囲を超えて、傷あとがみみずばれのように赤く膨らみ、痛みや痒みなど症状がひどく出ることがあり、これをケロイドといいます。
ケロイドは人間にしか出来ず、原因は完全には解明されていませんが、体質や人種差に影響されることが多く、また皮膚に強い張力のかかる胸や背中などにできやすいことが知られています。
ニキビやピアス穴など、わずかな傷あとから出来ることもあります。

隆起性皮膚線維肉腫(DFSP : dermato-fibro-sarcoma protuberans)という皮膚癌はケロイドに似た様子を呈することもあるため、DFSP が疑わしい場合は、診断をつけるために手術処置が必要となることがあります。

治療について

命に関わるものではないため全てを治療する必要はありませんが、ひきつれて困っている、痛みや痒みで困っている、範囲が広く見た目が悪くて困っている、といった場合、治療適応となります。
どの治療も、傷あとをあとかたもなく消すことができるというものではなく、傷あとを小さくする、目立たなくする、症状を改善させるというイメージです。

まずは数ヶ月、保存療法を試します。
炎症を落ち着けるためのステロイド含有テープ貼付やステロイド注射、内服薬、シリコンシートによる圧迫療法などがあり、患者様の生活スタイルに合わせて無理なく続けられる方法を選んでいただきます。

範囲が広い場合やひきつれが強い場合、保存療法に抵抗性であった場合等は、手術を検討します。
傷あとを切除した後にできる傷が、またひきつれやケロイドとならないような工夫をしなければならないため、患者様の傷あとの場所や大きさ、形に応じた手術術式をオーダーメイドで検討します。
術後は、最低でも数ヶ月の傷あとのケアが必須となります。

ケロイドに手術療法を行った場合、手術により出来る傷あとから再発する場合があるため、術後に数日間、発癌リスクを最小限に抑えた少量の放射線を当てる(電子線照射)ことで、再発予防を目指します。

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